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東京高等裁判所 平成2年(行ケ)99号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、同二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由について、判断する。

本件商標は、「MICROTEC」の欧文字を横書きしてなり、指定商品を第一〇類「医療器具、その他本類に属する商品」とするものであること、及び本件商標は、これを構成する「MICROTEC」の各欧文字を同一の書体、大きさ及び間隔で一連に表示したものであるが、右欧文字中の「MICRO」が「極小」、「微小」を意味すること、また「TEC」は特定の観念を生じない造語であることは、当事者間に争いがない。

ところで、商標は、自他商品の識別機能を果たすものとして商品に使用されるのであるから、商標中に当該指定商品の品質、形状等を表示する部分が含まれているときは、その部分は通常取引者、需要者に当該指定商品の品質、形状等を表示したにすぎないものと理解され、出所表示標識として機能しないというべきである。

本件商標は、前記のとおり指定商品を第一〇類「医療機械器具、その他本類に属する商品」とするものであり、商標法施行規則第三条別表によれば、第一〇類には、写真機械器具、測定器械器具、写真材料等が含まれており、これらの商品において、極く小型の商品を表示するため「マイクロカメラ」、「マイクロメーター」、「マイクロフイルム」等「マイクロ」の語が広く用いられ、取引者、需要者には「マイクロ」なる語は通常「極小」ないし「微小」な商品を表示するために用いられるものと理解されていることは社会常識に照らし明らかであるから、本件商標を構成する「MICROTEC」の欧文字中「MICRO」の部分は自他商品の識別機能を果たし得ないというべきである。

一方、本件商標を構成する「MICROTEC」の欧文字中「TEC」の部分は造語であつて、これが商品に使用されるときは、取引者、需要者の強い関心を引き、自他商品の識別機能を有することが明らかである。

したがつて、本件商標は、「MICROTEC」の欧文字を一連にしてなるものであるが、取引者、需要者は「MICRO(マイクロ)」の部分と「TEC」(テツク)の部分とが不可分のものとして認識することなく、「TEC」(テツク)の部分によつて自他商品を識別するというべきであり、「MICROTEC」全体が一つの格別の意味合いを有しない造語として認識されるということはできない。

そうであれば、本件商標は、取引者、需要者に、その構成全体に着目して「マイクロテツク」と称呼されるとともに、自他商品の識別機能を有する「TEC」の部分のみに着目して単に「テツク」とも称呼されるというべきである。

これに対し、登録第九七七九九号商標は別紙(イ)に示す構成、登録第九七八〇〇号商標は別紙(ロ)に示す構成のものであつて、共に審決認定の旧旧第一八類を指定商品とするものであり、また、登録第七三八五六四号商標は別紙(ハ)に示す構成からなり、登録第一三七九五八一号商標は「TEC」の欧文字を横書きしてなり、共に本件商標と同じく第一〇類を指定商品とするものであつて、これら引用各商標から「テツク」の称呼を生じることが明らかである。

右事実によれば、本件商標からは「マイクロテツク」の称呼のほか、「テツク」の称呼をも生じ、一方引用各商標はいずれも「テツク」の称呼を生じるものであるから、本件商標は引用各商標と「テツク」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は引用各商標の指定商品と同一又は類似であるから、本件商標は商標法第四条第一項第一一号の規定に該当するというべきである。

被告は、本件商標は、「MICROTEC」を同形、同大のローマ字により一連に等間隔に綴つたものであるから、これを強いて「MICRO」と「TEC」に引き離す事由は見当たらないこと、「マイクロカメラ」、「マイクロフイルム」という語から各々「極く小さなカメラ」、「極小のフイルム」という観念が生じることは認めるが、「マイクロカメラ」と「マイクロ」が同じであるはずがなく、「マイクロ△△」といつても、「マイクロカメラ」、「マイクロフイルム」を指すこともなければ、観念することもあり得ないこと、本件商標と引用各商標と類似の関係にある商標の登録が認められていること等を理由に本件商標と引用各商標とは称呼、観念、外観を異にする旨主張する。

本件商標は、これを構成する「MICROTEC」の各欧文字を同一の書体、大きさ及び間隔で一連に表示したものであることは被告主張のとおりであるが、右欧文字中の「MICRO」が本件商標の指定商品において「極小」、「微小」等の形状を示す語として取引者、需要者に慣用的に使用されていること、一方「TEC」は特定の観念を生じない造語であつて自他商品の識別機能を有すること、そのため「MICROTEC」が指定商品に使用されるときは、取引者、需要者は自他商品の識別機能を有する「TEC」の部分のみに着目して「テツク」とも称呼することは前述のとおりであり、被告主張の点は前記判断を左右するものではない。したがつて、被告の前記主張は、採用できない。

以上のとおりであつて、審決は、本件商標は「MICROTEC」という格別の意味合いを有しない造語であり、本件商標からは「マイクロテツク」の称呼のみを生じると誤認した結果、本件商標と引用各商標とは称呼において互いに紛れるおそれのないものであり、非類似の商標と認められると誤つて判断したものであるから、違法であり、取り消しを免れない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容する。

〔編注〕本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

被告は、「MICROTEC」の欧文字を横書きしてなり、指定商品を第一〇類「医療機械器具、その他本類に属する商品」とする登録第一七四一四三四号商標(昭和五二年五月一三日商標登録出願、昭和六〇年一月二三日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、原告は、昭和六〇年四月八日被告を被請求人として、本件商標につき、その商標登録無効審判を請求し、昭和六〇年審判第六六六三号事件として審理された結果、平成二年二月八日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年三月二八日原告に送達された。

二 審決の理由の要点

1 本件商標の構成、指定商品、本件商標の出願日及び登録日は、前項記載のとおりである。

2 請求人(原告)が、本件商標の登録無効の理由として引用する登録第九七七九九号商標及び同登録第九七八〇〇号商標は、それぞれ別紙(イ)及び(ロ)に示すとおりの構成よりなり、(旧々)第一八類『「レントゲン」管、球、電気計器、電気開閉器、電信機及其各部、其他本類ニ属スル商品一切』を指定商品として大正七年一一月五日登録、いずれも現に有効に存続しているものである。

次に、同じく登録第七三八五六四号商標は、別紙(ハ)に表示するとおりの構成よりなり、第一〇類「医療機械器具、これらの部品及び付属品」を指定商品として、昭和四二年四月七日登録、同六二年四月七日商標権の存続期間が満了し、昭和六二年五月八日に抹消登録がなされているものである。

また、同じく登録第一三七九五八一号商標は、「TEK」の欧文字を横書きしてなり、第一〇類「医療機械器具、これらの部品及び付属品」を指定商品として、昭和五四年五月三一日登録、平成元年五月三一日商標権の存続期間が満了し、同年一二月一三日に抹消登録がなされているものである(以下右各商標を「引用各商標」という。)。

3 請求人は、本件商標の登録は無効とする。審判費用は被請求人(被告)の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由として、本件商標は商標法第四条第一項第一一号に該当するものであるから、同法第四六条の規定により、その登録は無効とされるべきであると述べ、証拠方法として甲第一号証ないし甲第六号証の一ないし八を提出している。

4 被請求人は、前記の請求人の主張に対して答弁するところがない。

5 よつて、本件商標の登録を無効とすべき理由の有無について判断するに、本件商標の構成は前記のとおり「MICROTEC」の文字よりなるところ、構成文字は外観上まとまりよく一体的に表現されていて、しかも、全体をもつて称呼してもよどみなく一連に称呼し得るものである。そして、たとえ構成中の「MICRO」の文字が「極小、微小」等を意味し、この種商品の結合辞として使用されており(例えば、マイクロカメラ、マイクロフイルム、マイクロメーター等)、自他商品の識別標識として弱い部分であるとしても、本件商標は「MICRO」に続く文字が、何の意味合いを示さない造語と認められるから、かかる構成においては特定の商品を表示するものともいい難く、構成全体をもつて一体不可分のものと認識されるものとみるのが自然である。

そうとすれば、本件商標はその構成文字全体に相応して「マイクロテツク」の称呼を生じ、格別の意味合いを有しない造語よりなるものと判断するのが相当である。

一方、引用各商標は、それぞれの構成から「テツク」の共通称呼を生じ、特定の観念を生じさせない造語とみるのが自然である。

そこで、本件商標から生ずる「マイクロテツク」と引用各商標から生ずる「テツク」の称呼について比較するに、両者は、それぞれの構成音数の差、及び語調の差において顕著な差異があるために、明確に聴別し得るものといわざるを得ないから、両商標は称呼において互いに紛れるおそれのないものであり、また、観念については前記のとおりであるから比較すべくもないものである。

また、前記した理由及びその構成からは、外観上も類似する点は見出し得ないところである。

してみれば、本件商標は引用各商標と、その外観、称呼及び観念のいずれよりみても非類似の商標と認められるから、商標法第四条第一項第一一号の規定に該当するものではない。

したがつて、本件商標は商標法第四六条第一項の規定により無効とすることはできない。

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